韓国ラノベ「モンス☆パニック」日本語版がヤバい

 タイトルが炎上狙いのまとめサイトみたいでイヤなんですけど、これ以外に上手く形容できる言葉が思いつかなかったのでこれでいきます。

 

 

 

 さて、今では日本の萌え的なものは海外のオタクに受け入れられるだけでなく、彼らの手によって作られ始めてまして、例えば中国発ソシャゲの『アズールレーン』や日本のギャルゲーに大きな影響を受けている『Doki Doki Literature Club!』が話題になってますね(DDLCはメチャおすすめなんでオタクの人はやってください)

 そして韓国といえば『アイドルマスターシンデレラガールズ』で作曲したESTiや『この中に一人、妹がいる!』のCUTEG、『デスティニーチャイルド』のキム・ヒョンテ、『ファンタジスタドール』のAnmiなど、日本でも有名なクリエイターが数多くいます。

 既に韓国ではライトノベル市場も形成されていて、100万部を突破したソードアート・オンラインをはじめとした日本の作品がバンバン輸出される一方で、韓国人によって書かれる作品も存在しているのです。

 韓国ラノベ事情については以下の記事が面白いので気になる方はどうぞ。

news.yahoo.co.jp

news.yahoo.co.jp

 

 

 前置きが長くなりました。

 今回紹介する『モンス☆パニック』は、韓国人によって書かれて韓国で発売されたものを日本語訳して日本で販売しているライトノベルです。

 まずは表紙。

 

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 女の子は普通にかわいいのですが、帯の「パソコンが使えるジジイが作った地域の催し物のチラシ」感が警戒色を発しています。

 ちなみに第1回ノーブルエンジン・ライトノベル大賞受賞作とアピールしていますが、調べたところ第2回の間違いみたいです。こんなん巻かない方がマシだろ。一応書いとくと自主出版とか同人誌とかではなく商業ルートで発売された本ですよ。

 

 で背表紙。

 

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 はい、もう疑念が自信を飛び越して確信に変わりますね。学術書で背表紙が終わってるやつなんかありますが、エンタメ小説でこれはちょっと……。

 

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 裏表紙。実はブックオフの100円コーナーをうろついてる時に目についたイカれた背表紙がきっかけで購入しました。じゃああの背表紙はマーケティング的に正しいのかというと定価で買うにはリスクが大きすぎると思います。

 あらすじは「創造が創りだした」とか「高校生活が始まるとすぐに戦争が始まった」とか変な言い回しはありますが、まあ普通に面白そうですしここまで悪い条件が揃ってると逆に興味を惹かれますね。帯の新刊紹介『腕白関白』も気になります。

 

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 お約束のキャラクター紹介です。

 名前☆キャラ紹介はなんなんでしょうか。らき☆すたでしょうか。つのだ☆ひろでしょうか。

 絵は普通にかわいいんですよね。Pixivを確認したところ日本のライトノベルの挿絵も描いてるイラストレーターさんみたいです。

 

 主人公のシンユシン(新由新)は韓国・慶尚北道キョンサンブクト)に住む十七歳の高校生。突如韓国上空に現れた「神天島」の「女王」の占術によって選ばれた三人の交換留学生の一人として神天島の学校に編入することになります。

 余談ですがこの女王がチマチョゴリ風の衣装を着ていたり、名札がなぜかハングルだったり、シンユシンがM○Cからインタビューを受けたり(伏せ字にされても分からない)していて、いかに萌えコンテンツが日本人のために作られていたかを思い知らさせられます。海外のオタクもこういう気持ちで日本ネタを見ていたのでしょう。

 表紙で、病弱体質で不死身のキョンシー「斉天大聖」アイリンが背負ってる如意棒のストラップの、泣いてるのがシンユシン、女の子が中国からの留学生で退魔師のリ・シャオメイ、金髪が多分ヨーロッパ人で解剖マニアのシモン・オースチンです。

 彼らは妖怪・妖精・幻獣が住む神天島でドタバタ生活を送りつつ、「異名」をかけて戦う「異名争奪戦」に巻き込まれていきます。

 

 …………と本文に辿り着く前で既にヤバいのに一応説明したのは、このモンス☆パニック、ちゃんと本文を読めば結構面白いからです。特に終盤の、橋の下に住んでいる「ワルキューレグレース・ユポリアと人間の三人で他の神秘に立ち向かう異名争奪古代戦はかなりアツく、楽しめました。

 問題なのはちゃんと本文を読むのが難しいことです。

 本文を引用します。

 

 「何か問題でもあるヤム? アイリンのこういう状態は学校で見たことないヤム?」

 「見たよ! 見ましたよ!! 見たことはあったが!! あの子、今倒れたでしょ? 血を吐くだけで終わらないで倒れたじゃん? 何で地面がこんなに血で染まるんですか? いや、それ以前におかしくない? 普通このような時はその異名争奪戦ということの説明が出てこなければおかしくはありませんか?『異名争奪戦……それは!』みたいな始め方で!!」

 全力を尽くしたユシンの突っ込みにコニダは暫く目をパチパチさせ、首をかしげた。

 「小説の読みすぎじゃないヤム?」

 「僕にはお宅の存在が小説だが? ククッ! い、いや、突っ込んでいる時ではないだろう! とにかく早くあの子を……!」

 

 このように、高校生の英文和訳のような文章が延々続きます。漢字にするべきところがなってなくて、漢字にするべきでないところがなってて、凄まじく読みづらい。

 あとがきのことを作家後記と書いてたり、第三章のタイトルが「それは死亡フラッグです」だったり、言い回しが独特すぎます。

 致命的なのが会話主体・キャラ重視のライトノベルなのに口調がブレまくること。どうしても違和感が拭えません。

 

 「そ、そうだ! ひとまず茂みの下まで降ろすから、私が監視する所で用事を……」

 「そのような変態プレーをさせるきですか?! ヒャック?!」

 シャオメイが艶めかしいうめき声を流して足を組んだ。黒いストッキングの中の脚がピクッピクッと震える姿が実に魅惑的だ。

  「オ、オオオオオ! エ、エロレベルが測定不可能領域に上がってきた! す、すでに53万を軽く越えたぞ!」

 「どんどん変身しそうな不吉な戦闘力を口にするな!」

 「お、お、落ち着け、Mr.ユシン! そ、そうだ! うひゃー! リメンバー! うっしゃ~!」

 「君こそ落着け!!」

 

 グレースに捕まったシャオメイがおしっこを我慢している姿をユシンとシモンが視姦するシーンですが、おそらく違う面白さだと思います。

 

 

 予想ですが、プロの翻訳者ではない日本語が得意な韓国人が訳したものを全く確認も手直しもせずそのまま本にしてしまったのでしょう。僕の中の全然確認とかしてねえなこの本ランキング第一位をブッチ切りで更新です(その前は『田中ロミオの世相を斬らない』)。

 出版社の林檎プロモーションはなろう界隈で評判が悪いらしく、Googleに打ち込むと真っ先に「悪評」がサジェストされます。ストリートビューで見てみると山の中のクソデカい一軒家でした。謎すぎる。

 韓国では8巻+外伝3巻が出てるみたいですが、当然日本語版は2巻以降出版されていません。話は普通に面白いしキャラもかわいいのに本当に勿体無い……。

 

www.pixiv.net

 

 最後にウキウキで製作されたであろう日本語版PVを貼っておきます。

 サムネの中央の2人は1巻には出てこないのでおそらくここ以外で見ることはないでしょう。

 この曲もなんか歌詞が変なんだよなぁ……。

 

www.youtube.com